恐ろしいほど似ていた!
『ノルウェイの森』を改めて読んで
村上春樹さんの『ノルウェイの森』を読まれたことがありますか?
私も昔読んだことがあるのですが、正直なところ村上作品の中でもあまり好きではない作品なので、1~2回しか読んだことがありません。
好きな作品なら何度も読み返す性質(たち)なので、同じ村上作品でも『ダンス・ダンス・ダンス』や『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』などは10回以上読みなおしています。
『ノルウェイの森』が好きになれなかった大きな要因は、やはり共感することができなかったというところが大きいんでしょうかね~?
読んだのはかなり昔のことですが、読みながら登場人物すべてに共感できず、なぜこの本がベストセラーになったのかも理解しがたかったのを覚えています。
ただ、娘二人を自殺で亡くしてしまった直子さんのご両親には深く深く同情してしまい「かわいい娘が二人とも自殺してしまうなんて、このご両親は今後どのように生きていかれるのだろう?」と考えて暗い気持ちになったものでした。
最近は仏教関係の本を読むのに手いっぱいで村上春樹さんの本にまで手が届かないのですが、以前はそんな感じで村上さんの本をよく読んでいました。
そして思い出した
【大嫌いだった人よさらば~幸せをせつに祈る】で書きましたように、わたしが許すのに5年以上もかかった「A子」がこの5月に結婚退職していなくなりました。
※なぜ「A子」なのかは【大嫌いだった人よさらば~幸せをせつに祈る】をお読みください。

そして彼女との出会いから別れまでさまざまなことを思い出しながら、ふと思い当たることがあったのです。
そういえば『ノルウェイの森』に「A子」そっくりの少女のことが書いてあった気がする・・・。
とはいえ読んだのははるか昔のこと(-ω-`*)
その少女がどんなにむごい性格だったかおぼろげにしか思い出せません。
思い出せるのは『ノルウェイの森』を読んだとき、その少女のことが書いてある部分に対して「よくここまで人の性格を悪く描写できるもんだ」と思ったということです。
ところが本を読みなおそうと思っても、誰かにあげたか古本屋に売ったかで手元になかったので、とりあえずこの記事を書くためにわざわざ図書館から借りてきました。
そして『ノルウェイの森』を久しぶりに読み直してみたのです。
(|| ゚Д゚) そして驚愕!
さて「読み直してみたら思いのほかおもしろかった(*゚∀゚*)!」となるかもと思ったのですが、感性というのは年を重ねてもあまり変わらないのか、やっぱり共感できないままでした。残念!
というか、みんな簡単に死にすぎ(^◇^;)。
若いのに誰もかれもがまるで糸が切れたように死んでいくのが、当時の私は気にいらなかったし、今の私も気にいりませんでした。
そしてやはり主人公ワタナベにも共感できなかったし、彼の友人たちにも共感できなかったのでした。
しかし、今回読みなおしてみて別の意味で驚愕いたしました。
なぜかというと前述した少女と「A子」が同一人物ではないかというほどそっくりだったからでございます!
この「A子」そっくりな少女というのは、主人公ワタナベの恋人の直子が入所している施設で同室だったレイコさんという人の元教え子だった子です。
※くわしくは原作をお読みください。
ざっと説明しますと、レイコさんは挫折した元ピアニストで心を病んでしまったのですが、ご主人と出会ったことで病気もほぼ治り幸せな毎日を送っていました。
しかしその少女にピアノを教えることになったために、心の病が再発し離婚の憂き目にあってしまい、そのまま7年も施設で過ごしているという悲惨な過去を背負っています。
レイコさんが主人公ワタナベにこの少女のことを説明する描写がまるで「A子」本人のことのようにそっくりなのです!
まさか私もこの本を初めて読んだ頃は、こんな悪魔のような人間が実在し、さらには自分が出会うことになろうとは思ってもいませんでした( `^ω^)=3
まさしく「人生、一寸先は闇」ですな!
では、その少女をとおして「A子」がどのような人間だったかをご説明しましょう。
レイコさんの少女の性格についての描写
「その子は病的な嘘つきだったのよ。あれはもう完全な病気よね。なんでもかんでも話を作っちゃうわけ。そして話しているあいだは自分でもそれを本当だと思いこんじゃうわけ。そしてその話のつじつまをあわせるために周辺の物事をどんどん作り変えていっちゃうの。
でも普通ならあれ、変だな、おかしいな、と思うところでも、その子は頭の回転がおそろしく速いから、人の先にまわってどんどん手をくわえていくし、だから相手は全然気づかないのよ。それが嘘であることにね」
「彼女は自分を守るためには平気で他人を傷つける嘘をつくし、利用できるものは何でも利用しようとするの。
そして相手によって嘘をついたりつかなかったりするの。」
「でもだいたいはその子がしゃべっていたの。これがまた話しが上手くてね。ついつい引きこまれちゃうのよ。(途中略)観察が実に鋭くて、表現が適確で、毒とユーモアがあって、人の感情を刺激するのよ。とにかくね、人の感情を刺激して動かすのが実に上手い子なの。」
「病気なのよ」
「病んでいるのよ。それもね、腐ったリンゴがまわりのものをみんな駄目にしていくような、そういう病み方なのよ。そしてその彼女の病気はもう誰にもなおせないの。死ぬまでそういう風に病んだままなのね。だから考えようによっては可哀そうな子なのよ。」
これ、まんまA子(笑)
ちなみに『腐ったリンゴがまわりのものをみんな駄目にしていくような、そういう病み方なのよ。』という部分ですが、以前のわたしはひどいこと言うな~と思ったものでした。
いくら自分を傷つけたからって、その言い方はひどすぎるんじゃないかと思ったのです。
でも、今ならわかる。
これが事実であることを。
これは当事者ではないとわからないことですが、本当にそうなのです。
わたしは仏教徒なので、人の悪口を言ったりすることは控えるようにしていますが(十善戒)、彼女の場合、事実を言おうとするとそれがそのまま悪口に聞こえてしまうのです。
だから私はずーっと彼女について、彼女の本当を姿を言うことをだまっていました。
だって、言っても悪口にしか聞こえないし、そういうことを言ったところで仕方ないからです。
彼女と出会ったことは変えられないし、起こったことも変えられない。
わたしにできることは自分が変わるということだけでした。
そして結局、わたしは彼女を許し、彼女は1年半後にわたしのもとから去っていったのでした。
今回改めて読んでみて
今回『ノルウェイの森』を読みなおしながら思ったのですが、以前に村上春樹さんは、この少女やA子のような人間の被害にあったことがあるのではないでしょうか。
もしくは村上さんに近しい人かもしれませんが(例えば奥さんとか)。
そうでなくては、あのような人物描写は無理だと思うのです。
想像だけであの描写ができるとは思えません。
当事者だからこそできた描写なのではないでしょうか?
もし、そうなのだとしたら村上さん(もしくは近しい人)はものすごく大変だったろうと思います。
そして、この村上さんは『ノルウェイの森』を書くことで彼女への気持ちを浄化していったのではないかと思うのです。
みなさまが幸せでありますように( ゚▽゚)/
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先ほどコメントを書かせて頂いた者ですが、自分も仏教で曹洞宗です。
特に禅の教えに影響を受けています。去年大河ドラマでやっていた「真田丸」の真田幸村も曹洞宗だったそうです。
戦いの神・不動明王が好きで、お守りを買おうと思っています。
最大のお守りは、自分自身をコントロールする心の力を育てることと、やさしい心を育てることです。
最近、そのことがよくわかるようになってきました。
幸運を祈ります!