怒らずに受け入れる
前回からの続きです。
村上春樹さんの著書である「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」は人生のSuperMax暗黒時代である『ゴリゴリ期』を脱出するための指南書でありキーワードにそってその脱出ための方法を説明しています。
『ゴリゴリ期』の関連記事:「頑張っても頑張っても報われないと思っているなら~それは人生におけるゴリゴリ期です」
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 全2巻 完結セット (新潮文庫)
「村上春樹さんに学ぶ暗闇人生脱出法(Part2) 観察すること」では
キーワード1:観察すること
キーワード2:導いてくれる存在
までをご説明しました。
今回はキーワード3から説明していきます。
キーワード3:信じること
【ハードボイルドワンダーランド】では、真っ暗な地下世界で散々な目にあいながら走り回っているうちに、主人公である「私」は吐きそうになってきます。
その時、太った17歳のスーパーガールがこう言うのです。
「信じなさい。これはみんな過ぎていくことなのよ。悪いことはかさなるものかもしれないけれど、いつかは終わることなのよ。永遠につづくことじゃないわ」
続いて【世界の終り】でも主人公である「僕」に影がこう言うのです。
「自分の力を信じるんだ。そうしないと君は外部の力にひっぱられてわけのわからない場所につれていかれることになる」
そして、私たちも必ず『ゴリゴリ期』を乗り越えることができると信じるのです。
強い意志をもって乗り越えることができると信じれば必ず乗り越えることができます。
意志さえあれば必ず道は拓けると心から信じるのです。
キーワード4:受け入れること
暗黒の地下世界を太った娘と走り回り、やっとのことで真実を知る博士のところへ辿りつきます。
しかし、そこで知った真実は呆然とするものでした。
博士が善意とはいえ勝手に主人公を実験台にした結果、主人公は残り29時間で、自分の意識の中の【世界の終り】に飲み込まれてしまうというのです。
【ハードボイルドワンダーランド】の主人公は永久的に意識がなくなる状態になり=死ということになります。
読んでいて本当に唖然とするほどひどい話なのですが、主人公である「私」はさすがに少し怒るけれども、すぐに冷静になるんですね。
そして、すぐに残された時間を有意義に使おうと地下世界から出ようと動き出します。
昔、何回も読んだ時はこの主人公の冷静さがよく理解できなかったんです。
私は以前はかなり怒りっぽい人間だったので、彼のようにひどい目にあっても激怒しないなんて、そんなことあり得るのかと思っていました。
村上さんの作品の主人公はいったってCoolな人が多いのですが、おそらく村上さん自身が怒ることの無意味さと受け入れることの重要さをよく理解されているのだと思います。
「怒っておられるでしょうな?」とひととおりの説明が終わってから博士が主人公に聞くと主人公は「少しはね、でも怒ってどうにかなるものではないし」と答えます。
すごい、すごすぎる。
私が同じ立場でも同じように冷静でいられるか今でさえ自信がありません。
しかしこの怒らずに受け入れるというのが、ものすごく重要なんですね。
私達は起こることに勝手に意味づけをして、その上で自分が気に入らないと判断すれば怒ったり、落ち込んだり、悲しんだりします。
そうすると、エゴがますます強くなり、心は狭い壁の中にどんどん追いこまれていくような状態になり、心の自由な動きが制限されてしまうことになるのです。
エゴの壁を乗り越えるのに全く逆効果なんです。
まずは受け入れ、その上で冷静に判断する。
これは心の壁を乗り越えるのにとても重要な事です。
【ハードボイルドワンダーランド】の主人公がこのように冷静であったことが【世界の終り】の主人公に良い影響を与えます。
「村上春樹さんに学ぶ暗闇人生脱出法(Part4) 愛」に続きます。