仏教を現実問題に活かす
パワハラ撲滅への道のり~変える勇気、耐える勇気(Part2)からの続きです。
さて、前回のおわりに、『雷神』・『風神』と闘う決意をしたと書きましたが、これは言葉のあやでして、実際には自分がどこまでできるかというチャレンジするということです。
こういう場合、怒りにまかせてやみくもに二人を非難したところで、絶対にうまくいかないのは目にみえています。
こういうときこそ、仏教で学んだ知恵と理性を働かせ、忍耐をもって冷静に対処していかなくてはならないと思ったのでした。
ちなみに前回の話しの中で去年入社した新入社員が再教育を受けることになったことを書きましたが、『雷神』の班にもどされた途端、その子は『雷神』の厳しさに耐えられず1週間で退社しました。
これでまたもうひとつ『雷神』の班は新入社員が育たないという記録を更新してしまったのです。
時期をみる
さて、『風神』・『雷神』の二人のパワハラを鎮めるのに一番簡単な方法は、新任上司から注意をさせることでした。
しかし、新任上司は仕事を覚えることで精一杯。
前任の理不尽権化上司からの引きつぎが終わった後は、ほぼ毎日帰宅が真夜中になっていたようで、そのような状態のときに更にこのような過酷なミッションを追加するのは気の毒でとても言い出せませんでした。
まだまだ仕事をいろいろ覚えなくてならないときに、リーダー2人と揉めれば仕事が滞る(とどこおる)のは目に見えています。
それで、わたしはしばらく様子をみることにしたのです。
何事にも行動を起こすには時期というものがあります。
そもそも、『風神』・『雷神』がこのように班員に対して傍若無人で横暴なふるまいをするのようになったのには、前の理不尽権化上司が下の者の意見や訴えにまったく耳をかさず、二人に対しても全然注意をしてこなかったことが原因なのです。
そんな変化を望めない状況でなんらかの行動をおこしてもつぶされるだけです。
新しい上司は少なくとも人の意見を聞いてくれるひとでした。
そういう人に無理な注文をして、せっかくのチャンスをつぶすよりは、時期を待って行動に移す方が成功する確率が高くなります。
とはいえ、そのまま何もしないで漠然と日々を過ごしていたわけではありません。
新任上司が『風神』・『雷神』にどのように思っているのか真意を聞き出すべく「新任上司毎日お疲れ様飲み会」と題うって、少数の仲のよい同僚も誘い飲みに行くことにしたのです。
そこで、新任上司がOさんの件をとても心苦しく思っていること、上司の仕事のモットーが「仕事は楽しくやる」であり、今の状況を変えていきたいと思っていることなどをいろいろ聞き出すことができたのでした。
そして、そこでの話の中から1月後に「パワハラ講習会」が管理職対象に行われるという情報を得ることができたのです。
「パワハラ講習会」というチャンス到来!
さて、そもそも、なぜ「パワハラ講習会」が行われることになったのかといいますと、今年入社した新入社員の一人が、教育期間中、教育係から注意を受けた際、会社側に親が「パワハラだ」と騒ぎ立てたためです。
注意をうけたらパワハラというのは乱暴な言いがかりですが、しかし今はうちの会社は空前の人手不足なのです。
新人が辞めていってもらっては困るので、相手の申し出を受けて、パワハラ講習をすることにしたのでした。
しかしパワハラだと騒ぎ立てるのは本人達の自由なのですが、会社というのは人の集まりです。
社会もロクに知らない子が「これはパワハラだ」といきなり騒ぎ立てたら、周りとうまくやっていけるわけがありません。
親が自分の子供かわいさに口を出したがるのはいいのですが、そのためにその子が会社になじめなくなるというリスクはあるのです。
そして結局、その子は教育期間が終わらないうちに会社を辞めてしまいました。
辞めるのは簡単ですが、その後その子が新しい会社になじめるかというと、多分なじめないんじゃないでしょうか。
自分の思い通りになる会社なんて、この世には存在しないのですから。
しかし、この子のおかげで「パワハラ講習」が開かれることになったのはわたしにとってラッキーでした。
といいますのも「パワハラ講習」を受けたのにもかかわらず、『風神』・『雷神』がパワハラを続ければ「彼女らはパワハラ講習を受けたのにもかかわらず、パワハラを続けているのは問題である」と会社側に申し立てしやすくなるからです。
実際のところ『風神』・『雷神』の横暴な態度にはみんな我慢できないところまできていたのです。
わたしは『風神』と『雷神』の班の人たちが、それぞれのリーダーと仲良さそうに話しているのを見るたびに「ストックホルム症候群」という言葉が頭に浮かんできたものでした。
確かに表面上は笑顔で接していて仲がよさそうにしていますが、その笑顔の裏には『風神』・『雷神』への恐怖心や怒りがはっきりと見えていたのです。
表面上は仲良くしていても、当然、裏では文句の大合唱だったのでした。
日本人は勇気がない
スマナサーラ長老は「日本人は勇気がない」と法話の中でよく言われます。
そして、その言葉を聞くたびに、私の心は動揺していました。
勇気がないと言われることに漠然とした悔しさを感じていたのです。
でも確かに日本人は勇気がないのです。
今の職場の人たちも『風神』・『雷神』が横暴だと思うなら、団結して仕事をボイコットするなり、抗議するなりすればいいのです。
班員が言うことをきかなくなれば、リーダーがいくらいても仕事にはならないのです。
にもかかわらず、誰も何もしようとしない。
なぜでしょう?
それは、自分にとばっちりが来るのがこわいからです。
みんな変化を望みながら、自ら行動を起こす勇気もなく、行動を起こした結果を受け入れる勇気もないからです。
変化を望むなら、なんらかの行動を起こさないかぎり変化は起きないのです。
みんな、仕事についての不満などをSNSなどで発散しているのをよく見かけます。
では、実際に状況を変化させるのになんらかの行動を起こしているでしょうか?
おそらくほとんどの人がやっていません。
日本人のほとんどが「ことなかれ主義」なのです。
「変える勇気」がないのです。
そして、わたしはスマナサーラ長老の「日本人は勇気がない」という言葉に後押しされて、自分一人でも勇気をもって変化を起こそうと決意をしたのです。
後悔しない生き方を選択する
正直なところ、わたしは「悪魔のA子」と「理不尽権化上司」という自分にとっての課題を乗りこえたあと、今の仕事を続ける意義を見失っていました。
そしてOさんが理不尽に解雇されたとき、今の職場に対してほとほと絶望してしまったのです。
もう仕事を辞めようかと思ったとき、辞めた後に一番なにを後悔するだろうということを考えてみました。
すると「今の状況を変えることなく、みんなが辛いままで退職したら、きっと死ぬまで後悔するだろう」という考えがおこったのです。
自分が会社を辞めた後も、みんなが『風神』・『雷神』におびえながら怒りながら、いやいや仕事をする様子を想像したとき「それはダメだ、絶対に後悔する」と強く思いました。
今の状態を放置したまま退職するのは「逃げる」ことになります。
逃げたら、人生の課題はどこまでも追いかけてくるということをわたしはもう嫌というほど知っているのです。
絶対に「逃げたらあかん」のです。
「まずは『風神』・『雷神』のパワハラをやめさせよう。会社を辞めるか辞めないかはその後決めよう。」
そう決意して、『風神』・『雷神』を鎮めるため行動に移すことにしたのでした。
パワハラ撲滅への道のり~変える勇気、耐える勇気(Part4)に続きます( ゚▽゚)/